今日から私は自閉症児の母です
ハルが大学病院で自閉症と診断された後の私の気持ちを書こうと思います。
診断を下されたのは、もうずいぶん前なのに、いざ当時のことを書こうとすると、キーボードを叩く指が止まってしまいました。それくらい、子どもが発達障害だと診断されることは、親にとって重たいことで、それでも乗り越えていかなくてはいけないことなのです。
大学病院で自閉症と診断された瞬間から、私は自閉症児の母となりました。
インターネットで調べても、自閉症のチェックリストに当てはまったので、覚悟はしていたはずなのに、先生に
「自閉症のグループに入っています」
と言われた時の絶望感といったら、未だに忘れることができません。私の中では、すでに「この子は、きっと自閉症だ」と確信めいたものがあったのに・・・。これまでは、「発達がゆっくりな子」だったのが、この日から、ハルは、「自閉症児」となったのです。
自分が、障がいを抱えた子の母になるとは思っていませんでした。誰しもそうですよね。「発達障害を抱えている子は、ちゃんと育てることができる親の元に生まれてくるはず・・・」と何の根拠もありませんが、そんな風に思っていました。私は、きっと育てることはできないから、障がいを抱えたこの母になることはないと思っていました。
でも、違いましたね。神様は、私にも育てることができると思ったのでしょうか?育てるべきだと思ったのでしょうか?
何だかわかりませんが、ハルは障がいを持っていました。診断を受けてから、毎日のように泣きました。
どうして、この子は障がいを持っているのだろう。
妊娠中にインフルエンザに罹ったからだろうか?
私の日頃の行いが悪いのだろうか?
悪いことしか浮かんできませんでした。夫は、私の想いを受け止めることができないと思い、思いをさらけ出すことはできませんでした。実家の両親は、すでに亡くなっていたので頼ることはできません。親子教室の先生のことは信頼していましたが、自分の想い全てを話すことはできませんでした。
どれか一つでもできたなら、少し楽だったのかもしれませんが、できなかった私は、真っ暗闇の中を1人彷徨っていました。辛いけど、平気な顔をして親子教室に通っていました。周りのお母さんたちは、お子さんと笑顔で遊んでいました。今になればこんなことは思わないのですが、みんなお子さんの障害を受け止めることができているんだな・・・と感じていました。私は・・・正直、笑えていたのか、わかりません。本当に地獄のような日々でした。でも、目の前のハルは、いつもと同じように楽しそうに遊んでいました。
そう、いつもと変わらない日々。
自閉症と診断されたって、ハルはハル。
これまでと変わらない。
苦戦しながらもオムツを履こうとしている姿を見ていると、自閉症という診断名ばかりに気を取られて、目の前でゆっくりながらも成長していくハルを見てあげることができていないことに気付きました。
そうか、もう前を向くしかない。
ハルは、私を選んで生まれてきてくれたのだから、精一杯育ててあげないといけないんだ。ハルは、私がいないと生きていけないんだ。私がしっかりしないと。
そう言い聞かせ、とにかく前を向き歩き始めました。
見通しも悪く、真っ暗な道だけど、そのうち開けてくるはず。
そう信じて。
そして私は、自閉症児の母ではありません。ハルの母です。
そう思うことができるまでは時間がかかりました。私はどちらかと言うと、物事をプラスに考えるので、その時間は短かったかもしれませんが、何年間も悩み続ける方もいらっしゃいます。
悩んでいいじゃない。
落ち込んだっていいじゃない。
泣いたっていいじゃない。
それは、子どものことを一生懸命考えている証拠。
きっと、あなたは素敵なお母さん、お父さんです。