言葉のキャッチボールができなくても、ジェスチャーで伝えるハルのお友達【自閉症児育児】
私の息子のハルは、2歳半で自閉症と診断され、2歳10ヶ月から療育園(児童発達支援センター)に通っていました。療育園で出会ったお友達が卒園した後も、遊ぶ機会がありました。今回は、親子の体操教室に参加した時のエピソードを紹介します。
ハルとボール投げ
もう4年ほど前の話になりますが、ハルと同じ療育園に通っていたお友達が遊んでいる様子を見ながら、そのお子さんのお母さんとお話していました。
A君(小学3年生)は、ハルとタイプが似ていて、ハルが生きていたら、こんな感じになっていたのかな?
と勝手に親近感を覚えています。
そのA君が、体操教室の先生と、ボール投げをしていたのです。
その時、お母さんに
「小さい頃、あんな風にボール投げできた?」
と聞きました。
そのお母さんは、
「全然できなかった。ボールを投げてもらっても、それに興味がない。第一、人に興味がないから、関わろうとしなかった」
と話してくれました。
ハルも同じでした。
お兄ちゃんと同じようにハルにもボールを投げるのですが、絶対に投げ返してはくれませんでした。
A君も、ハルと同じような感じだったようですが、先生とボール投げをしていました。
しかも、とても楽しそうに。
今は、できなくても、いつまでもできないままじゃない。
そんな風に思えるといいですよね。
ハルは、もういないけど、ハルのお友達の成長がとても楽しみなんです。
久しぶりに会ったら、「こんにちは!」と元気に挨拶をしてくれ、言葉があまり出ていなかったのに、お母さんと会話をしていたり・・・。
本当に子どもの能力には驚かされます。
A君ボール投げ裏話
A君と体操教室の先生のボール投げには裏話がありまして・・・。
この時のボール投げは、単なるボール投げではなく・・・。
初めは、先生とボール投げを楽しんでいて、A君も先生がいる方にボールを投げていたのですが・・・物足りなくなったのか・・・?
A君は、先生がいる場所とは違う場所を指差していました。
どうやら、「あっちに行け」という訴えのようです。
(A君もハルと同じように言葉によるコミュニケーションが苦手なので、ジェスチャーでの訴えになっているのでしょう)
「えっ?A君、あっちに行ったらいいの?」
と先生は、A君の言うとおりに移動します。
先生も、A君のお母さんも私も、A君は先生が移動した方へボールを投げると思っていました。
しかし、次の瞬間!!
A君が投げたボールは、先生が居るところとは反対の場所へ・・・。
「えっ!A君、そっちに投げるの?」
と先生は、ダッシュでボールを追いかけます。
そして、ボールを受け取ると、A君に返します。
A君は、再び、先生に元の位置に戻るように指をさします。
先生、到着。
A君、再び先生がいる場所とは真逆の方向にボールを投げました。
先生が走る様子を見て笑っているA君。
こんなボールのやりとりですが、これもA君は先生とコミュニケーションを取っているんですよね。
小さい頃は、こんな様子は見ることができなかったので、お母さんも喜んでいました。
そして、先生もしんどそうではありましたが、
「A君がこうやって、先生と関わろうとしてくれるのが嬉しいよ」
と喜んでくださっているのが印象的でした。
言葉のキャッチボールができなくても、思いを伝える手段というのはあるはずなんですよね。
A君のようにジェスチャーで伝えたり、文字が書く事ができる子は文字だったり・・・。
きっと、それぞれのお子さんに合った方法があると思います。